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2コ上の恋人

キャンパス内で美人だと有名なセシル・ハーヴィ。
透き通るような白い肌に長い睫毛に縁取られた澄んだ瞳は紫水晶で銀糸のような煌めく髪、華奢だが長身で脚も長い。
女性の憧れのような存在だと同回生の女の子たちが言ってた気がするが、間違いなくれっきとした成人男性だ。
経済学部の3年生で俺より2つ年上の先輩だ。

お昼になると天気が良い日は花壇が眺められる日当たりの良いベンチで持参したお弁当を広げて食べているのだが、いつも利用しているそのベンチには先客がいた。
そっと近づくと座って長い脚を組んで気持ち良さそうに眠っている。
陽の光をキラキラと反射する銀糸の髪が風にそっと揺れる。
そう、今目の前で座って眠っている人こそセシル・ハーヴィ本人だ。
多分お昼前のコマが空いていたから休んでいるのだろう。
俺がお昼になると此処にやって来るのを知っているから。

セシルを起こさないように隣に座るとそっと持ってきたお弁当を広げる。
卵焼きを摘んで口に運ぼうとした所でセシルの長い睫毛がぴくっと動いた。
ゆっくりと開かれる双眸。
若干眠気が残っているようで暫く瞬きを繰り返している。

『うんー……』

そして俺の方を向いた。目が合う。

『おはよう』

『……おはよう。……来てたなら起こしてくれれば良いのに』

『気持ち良さそうに寝てたから』

それにしてもこんな所でうたた寝してるとは珍しい。
恐らく昨晩遅くまでレポートでもまとめていたのかもしれないな。

『しかも1人で食べてるし』

『セシルの分も作ってきてあるよ、はい』

隣においてあるリュックから包を取り出すとセシルが差し出していた両手の上に乗せる。

『ありがとう』

受け取るなり包んであるバンダナを解き蓋を開けて感嘆の声をあげる。

『わ、今日も凄く美味しそう。頂きます』

そう言って卵焼きを口に運ぶ。
セシルは卵焼きが好きだ。
砂糖を多めに入れた甘くてふんわりとしていて焦げ付かせないように綺麗な焼き目をつけた卵焼き。
あまりにもセシルが卵焼きを美味しそうに食べるので、その顔がもっと見たくて、その結果焼くのが更に上手くなった。

『んー、美味しい』

幸せそうな表情だ。こんな顔を見れると作り手冥利に尽きるな。
そう、いつもすぐ近くでこういうセシルを見ているので、キャンパス内での噂はセシルの取り繕っている外面だけだというのをよく知っている。
確かに美人で優等生ではある。
だが本当はそこにもう1つ可愛いという単語が付け加わるのだ。
2つ年上だけど可愛いと思ってしまう。
嬉しそうに卵焼きを口に運ぶ姿を見て口元が緩む。

『どうしたんだい?さっきから箸が止まってるみたいだけど』

『いや、なんでもないよ』

リュックから取り出したステンレス製のボトルからカップへと温かな湯気を立てるハーブティーを注ぎ1つをセシルの隣にそっと置いてから自分の分のカップへとそっと口をつける。
ホカホカと立てる湯気で少し赤くなった顔を誤魔化そうとしてるのだが、もしかしたらお見通しかもしれないな。

大学生フリセシです。
セシルが卵焼き好きだったら可愛いなぁなんて思いながらちまちま書いてたのですが、漸く出せるレベルになりました。
フリオニールお手製のお弁当、食べてみたいです(`・ω・´)

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