真名、教えて?【DFF】
何故か寝付けなくて風に当たりたいと思い、部屋をこっそり抜け出して外へ出る。
"家"の近隣は時の移り変わりがあり、朝であれば明るく朝日が感じられ、夜になれば月や星が瞬く。
この時の流れが本当に正しいかどうかはわからないが、何となく体が覚えているリズムと一緒の様な気がするので違和感なく過ごせている。
今は夜で空を見上げると月が輝き星が瞬いている。
僕の世界では月が2つあったので1つしかないと言うのはどこか寂しく感じるけど、月の明かりを浴びると落ち着く。
でもやっぱり何かが物足りなくて無意識に地を蹴っていた。
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降り立ったのは見晴らしの良い高台。
眼下には大小様々なクレーターやごつごつとした岩場が広がる。
『こんな時間に1人歩きとは感心しないな』
背後に慣れ親しんだ気配が生まれ、ゆっくりと隣を見上げれば黒い甲冑を着込んだ兄の姿があった。
月の渓谷に1人でやってくると直ぐにでもこの兄は現れるのだ。
『この世界で時間は意味を持たないし、仮に今が真夜中だとしても成人男子に1人歩きが危険だとか言う?』
『私なりに心配しているのだ。お前は色々と危なっかしい部分があるからな』
『もぅ……』
心配してくれるのは嬉しいけど子供扱いされているような感じがして面白くなくて頬を膨らませる。
『怒るな』
『やだね。それに何で甲冑なのさ』
『兜は外しているだろう』
『そういう問題じゃないし!』
最近になってやっと兄さんとこんな風に会話が出来る様になって来た。
それまでは兄弟でありながらもどこか他人行儀な関係だったから少しずつ兄弟としての時間を取り戻して行きたいんだ。
『お前こそ、そんな薄着では冷えるぞ』
僕は少し前まで自分の部屋でベッドに潜り込んでいたからいつもの鎧姿ではなく部屋着に厚手のストールを肩に掛けただけの格好だ。
流石に部屋着だけだと寒いだろうと思ってストールは羽織ってるけど、それでも少し肌寒い。
此処は昼夜の時間の流れはなかったと思うんだけど。
『寒くなったら兄さんに暖めて貰うつもりだったのに』
それなのにどうして甲冑なのさ!!と再び頬を膨らませる。
『それはすまなかった』
『本当にすまないって思っているならキスして?』
『む……』
眉根を寄せ困ったような表情をしている。
そんな困った顔見せても妥協してあげないんだから。
『それだけでお前は良いのか?』
『え?』
これは予想だにしていなかった。
私だったらキスだけでは物足りない。そう言っているのだと言って荒々しく僕を抱きしめてきたけど、重ねられた唇からは優しさが感じられる。
僕たちは血の繋がった兄弟だけど、2人きりの時は恋人同士でもある。
『……は……僕も、無理かも……』
1度離してから今度は僕から求める様に唇を重ねる。
自分からするのはあまり慣れていないから少したどたどしくなってしまうけど、兄さんの事が大好きだと言う気持ちは伝わっているかな?
『ねぇ、兄さん…シよう?』
正面から顔を覗き込むように見る。
『朝、お前が部屋にいなかったら心配する者がいるのではないか?』
『大丈夫。僕の姿が見えないと兄さんの所に居るって思われているから』
『まったく。お前といいお前の仲間といい……私を信用しすぎではないか?』
表情が複雑な心境だと物語っている。
『兄さんはいい人ですとも』
満面の笑みを返すと、まったくと言って顔を顰めているけど、その頬は少し赤くなっていたのを見逃さなかった。
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兄さんが休む為に使用している月の渓谷の一画に作られたプライベート空間へとやってくる。
2人きりで会うのは大体此処。誰にも邪魔されないしね。
ふかふかのソファに沈み込むように座る兄さんの膝の上に僕は座っていた。
『そういえば、気になってたんだけど。ゴルベーザって本名じゃないよね?』
『ああ』
『兄さんの本当の名前、教えて?』
きっと、兄さんの真名を知っている人は兄さん以外に誰も居ないのではないかと思う。
『そうだな、お前には知っていてもらいたい』
温かい大きな手で優しく僕の頭を撫でながら"セオドール"これが私が両親から貰った名だと教えてくれた。
『セオドール兄さん……素敵な名前だね』
ね、2人きりの時は名前で呼んでも良いかな?と身体を少し後ろへと倒して兄さんに寄り掛かる。
『いいですとも』
ぎゅっと抱きしめてくれた。 兄さん…いや、セオドールの腕の中は温かくて落ち着く。
『ずっと、真名で呼びたいって思ってたんだよ』
『そうか。もっと早く教えておけば良かったな』
『セオドール。大好きだよ』
『私もだ』
少し身体を動かしてセオドールの首へと腕を回して抱きつくと、膝の裏に手を入れられて横抱きにされると次の瞬間には地面から足が離れていた。
そのまま向かったのはセオドールがいつも寝ている寝室だ。
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ただ装備を解いただけの状態の姿は割りと見ているけど、服を着ていない所を見るのは久しぶりだった。
自分の身体とは全然違い、凄く逞しく引き締まった身体に見事なまでに綺麗で圧巻される筋肉。くっきりと割れ目が見て取れる腹筋。
憧れの身体を持つ兄に少しでも近づけないかと思い筋トレに力を入れてみたりもしたので、筋肉量は増えたけど、余り見た目に変化は無い。
同じ兄弟なのにどうしてここまで違うのかな。
『本当に格好良いなぁ。羨ましいよ』
褐色の肌にそっと触れ頬を寄せる。
『まったく、私に憧れるとは、酔狂だな』
『男として格好良いって言われる方が嬉しいし?』
綺麗とか美人とか可愛いばかりだよ…と頬を膨らませる。
『言われるのは嫌か?』
『…セオドールになら良い…』
顔だけ上げてセオドールを見る。
『なら、そろそろお前の可愛い姿を見せてくれぬか?』
『もぅ……良いよ』
自分でもはっきりわかる位赤くなった顔でどうしてそういうセリフをサラッと言ってくるかな…と口を開いた。
『お前が可愛い顔を見せてくれるのなら、いくらでも囁いてみせるが?』
『そんな事されたら僕の方がもたないよ』
R-18版に続く。
やっと書けた、月兄弟の兄弟仲超えちゃってる所!!
セシルに兄さんの真名を呼ばせたかっただけなんです><
11/23の日なので兄さんにサービスサービス♪
散々さっさと月兄弟結婚しろと(R-18ページ含め)騒いでますが、その前に兄さんはセシルに真名教えておかないと…と思いまして。
当初は此処で終わる予定だったのですが、こっそり続きます。
思いっきりいちゃついとけー!!>ヮ<とかなり暴走気味に書いてますが、あまりに暴走しすぎて長くなりすぎて(この話よりも更に長い)終わりが見えなくなってしまったので、一旦此処で切って分ける事にしました。
続きは近日中にあげます!
と言うわけで、11/23の日おめでとー>ヮ< 来年は結婚させる!!>ヮ<←