Type : 6 04:甘える
『セシルってさ、おれに甘えてこないよな』
セシルの膝に頭を預けて寝転がって見上げる。
手触りの良い毛の長いラグとセシルの太腿は本当に気持ち良い。
これが昼食後だったら間違いなく心地よい眠りに誘われていたと思う。
『おれってそんなに頼りない?』
『ううん、そんな事ないよ。凄く頼りにしてるから……ただ……』
『ただ?』
おれの元気良くはねている髪をそっと撫でながら、甘えるってどうしたら良いのかがわからないんだと困った様に口にした。
『へ!?』
思わず飛び起きてセシルの顔を正面から見る。
セシルから聞き出した生い立ちを急いで思い返してみる。確かに甘えられる環境ではなかったかもしれないけど、甘え方を知らないだと!?
『冗談だろ?』
『僕が冗談を言うタイプに見えないって言ったのは何処の誰だっけ?』
『いや、おれだけどさ……』
セシルって変に真面目すぎるんだよな、頭が固いと言うか。
だから冗談とか言わないタイプだよなって前に言ったんだけど……
『もしかしたら知らない間に甘えているのかもしれないけど、どういう事が甘えると言う事なのかが解らないんだ』
ひょっとしてこれはある意味美味しい状況か?なんてちょっと思ったりしたのは素直に認めておく。
『う~ん、他人の好意を素直に受け取るのも一種の"甘える"だけど、おれが言いたいのはそうじゃなくて……』
手招きしてセシルが何?と顔を近づけてきた所にそっと耳打ちした。
『……なっ!?』
一瞬にして耳まで真っ赤になった。
ホント、ウブだよな。
『そ、そんな事出来るわけ無いだろ!?』
『おれとしては激しく希望したいんだけど』
『…………無理』
いくらキミの頼みでも、それは流石に……と、恥ずかしそうに俯いてしまった。
『う~ん、じゃあ此処に座って?』
胡坐をかいていた脚を崩して投げ出すように座り直してからぽんぽんと自分の膝を軽く叩く。
警戒しているセシルに何もしないからさ?と優しく笑いかけると、恐る恐るといった感じで脚に跨る様に向かい合って座る。
『……それで?』
『おれの首に両腕回して?』
出来たらそのままぎゅっと抱きつい……と言いかけた所で、こう?と首を少し傾げるセシルの顔が目の前にあった。
お互いの顔に息が掛かるほどの距離だ。
ま、これでも良いか。
『良く出来ました』
軽くセシルの頭をよしよしと撫でる。
『こんな風にセシルから軽くスキンシップ取ってくれるのも良いと思うんだ』
『……この位なら』
『少しずつ慣れていけば良いからな?』
少しずつ慣れてくれる事を楽しみに思いながらセシルの腰に腕を回して抱きつく様に胸に顔を埋める。
『あー、やっぱりこうしてると落ち着く』
セシルの鼓動が早い。
顔は見えないけど、やっぱり真っ赤なんだろうな。
セシルは直ぐ顔を真っ赤にするからホント可愛いよな。
『……僕もこの方が落ち着くんだけど』
『たまにはセシルから甘えて欲しいんだけどな?』
『……う~ん。善処はしてみるよ』
『期待してるからな』
甘え方を知らないセシルと甘え上手なバッツ。
恥ずかしがりやだからなかなか自分から大胆な行動に出れないとか、そういう部分では凄く不器用な人だと思う。
少しずつ甘えられる様になってくれたら色々と美味しいと思います(^q^)
因みにバッツがセシルの耳元で囁いたのは……やっぱりご想像にお任せします(笑)