※8/21の北海道オンリー、9/25の東京オンリーで配布してた同名の冊子に収録されているSSと同じ内容です。その為タイトルと内容が合っていません。

『え、バッツが家庭教師のアルバイト?』

『うん、何か問題でも?』

学食でセシルと飯食ってる時の事だった。
週末に買い物に付き合って欲しいと誘われたのだが、生憎今週末はバイトが入っていた。
受験生対象に家庭教師やってるんだ。

『いや……悪くはないんだけど……教えられるの?』

整った眉を僅かに寄せて少し首を傾ける。
相変わらず、このセシルの少し首を傾ける癖は健在だ。

『どういう意味だよ』

『成績的に』

『はっきり言うなぁ』

『付き合い長いだけにね……』

『だったらやれば出来る子だってのもわかってるだろ?』

『まぁね』

持ってたフォークを皿の端に置いて冷えたミルクの入ったグラスに手を伸ばして一口飲んでから口を開く。
なんだかんだ言っても、セシルは心配してないと思う。
家が隣同士の幼馴染で、幼稚園から大学まで何故かずっと一緒な腐れ縁だからおれもある程度はセシルの事わかるし。
この顔は多分楽しんでる。

『それで、教えてるのどんな子なの?』

白くすらっとした指を組むと、興味ありますって表情で少し身を乗り出す様にして問いかけてくる。
そして、光度を増した紫水晶の瞳を見て自分の勘は間違ってなかったと確信した。

『んー?』

---

『バッツ。顔が更に面白い事になってるぞ…』

『更にってなんだよー』

問題を解いてるスコールの顔を見てたらそう突っ込まれた。
家庭教師のアルバイト先。スコールの部屋で2人きりで授業の真っ最中だ。

『ほら、さっさと解く!後5分しかないぞ』

腕時計を見せながら文字盤をコツコツと指で叩いてみせる。

『だったらその顔で俺の顔を見るの止めてくれないか?集中できない』

『あれれ?おれがあまりに格好良いから惚れちゃった?』

次の瞬間参考書の角が飛んできた。
分厚いやつ。流石に当たったら痛そうだ。

『おわっ?!』

既の所でそれを避ける。

『怒っちゃいやん』

『兎に角邪魔しないでくれ!』

眉間に更に皺を寄せながらも視線は書かれた問題を追いペン先からはスラスラと回答が弾き出されていく。
そんな顔ばかりしてると眉間に皺の痕付いちゃうぞ。そんなに綺麗な顔してるんだからもっと笑えば良いのに。勿体無い。
そして5分経つ前にスコールが顔を上げて終わったと一言。

『お疲れさん。答え合わせしちゃうからその間休憩してて』

掛けてた眼鏡を指で押し上げて赤ペン片手に回答をチェックしていく。

『志望動機、何だっけ?』

『急に何だ?』

『なんであの大学受けたいんだっけ?』

視線は紙に落としたまま反対側で寛いでいるスコールに話しかける。

『……教員免許取りたいんだ』

『楽じゃないよ?』

右上に点数を書き込んで採点終了。
それから視線をスコールへと向ける。

『分かってる』

『おれはこんな形でしか応援してやれないけど……スコールが入学する(くる)の待ってるから』

『は?』

驚いた顔でおれの目を見返してくる。

『スコールの志望校に通ってるんだよ。2年前に実際受験してる先輩ってわけ』

『聞いてない……』

『言ってないもん』

ぺろっと舌を出す。

『はい、今日のテスト合格な。休憩終わったら間違った個所の復習して終わりにしよう』

採点の終わったテスト用紙をスコールの方へと戻す。
そして用紙を取ろうと手を伸ばしてきた瞬間その腕を掴んで引き寄せる。

『ッ!!』

『本当に、待ってるからな?』

耳元でそう囁いてから掴んでた腕を離す。

発行したオフ本"おにいちゃんといっしょ"のプロットを考えてた段階で没になった版に手を加えて読めるようにしたものです。
バッツとセシルは幼なじみで現在も同じ大学の同期という接点があり、バッツとスコールとはただのカテキョの先生と生徒の関係でした。
スコールが何か可哀想だったので3人を幼なじみという関係に持って行きたかったとか後、他にも色々と原因がありまして本の原稿としては没になりましたが、これはこれでありかなぁと思ってます。
実はこれ、続きがありまして、R-18モノになってしまうので避けましたが、要約すると別の日にバッツの所に泊まりに来るスコールとアーッ→次の日の朝目を覚ますとセシルがスコールの制服を持って朝ご飯食べにおいでというメールがバッツに届いてる→セシルの家に行くと朝食作って待ってるセシルとスコールの初対面→セシルが制服を持って来いって言ったのはきっとバッツの事だから脱がせたYシャツとかそのままにしてシワだらけになってるだろうという機転(アイロンがけしておくよ)→2人で黙々と朝食ごちそうになる→2人を送り出した後兄さんが起きてきてセシルと一緒に朝食を~と言う、58と新婚月兄弟的な話に発展してしまいそうだったので没になったというのが最大の理由かな?(笑)純粋に58書かせてくれ、頼むから(笑)