それはティナが1人でパンデモニウムを探索していた時の事だった。
偶然拾った物の中に混ざり込んでいたそれは思い描いたあの人にサイズが丁度良さそうだったのだ。
帰ったら早速お願いしてみようと、探索はそこで打ち切り嬉しそうに帰路につく事にした。

荷物を自分の部屋に置いてから1階へと戻る途中にセシルが歩いて来るのに気が付いた。

『あ、セシル。丁度良かったわ』

探してたのと駆け寄ると、セシルはいつもの笑顔でどうしたの?と返してきた。

『ちょっとお願いがあるの、セシルにしか頼めなくて…』

『僕で良ければ力になるよ』

『ありがとう!』

付いて来て欲しいと言うので向かった先はセシルたちの部屋がある2階から更に上の階へと向かう階段… ティナの部屋がある3階は男子禁制となっている。

『ちょっと、ティナ、待って!』

『大丈夫だから』

『いや、大丈夫じゃないし、ダメだよ!!』

『ね?お願い!』

階段の踊り場で押し問答する事になったのだ。
普通に考えるとセシルが負けるとは思わなかったが……
本気を出したティナにはセシルでも適わなかったのだ。
3階に無理矢理連れて行かれ空き部屋に押し込まれ……

うわあああぁぁぁぁという叫び声は1階のリビング迄聞こえた。
それに真っ先に反応したのはフリオニールで『セシルッ?!』と叫んで2階のセシルの部屋へと駆け込んだ。
少し遅れてティナとセシルとフリオニールを除くこの"家"の住人全員が部屋の入り口に辿り着いたのだが、部屋にセシルの姿はなかった。

『あれ?居ない??』

部屋を見渡すが窓が開けられた痕跡も、人がいた気配も全くない。
一体先程の悲鳴は何処から聞こえたのかと首を捻っていたら、微かに窓の外からどうして僕が?!とか待って!!といったセシルの切羽詰まった声が聞こえた。
窓を開けてみると上から声がする事がわかった。

『この上って……』

一同顔を見合わせて何故3階からセシルの声が?となり、取り敢えずぞろぞろと2階から3階への階段の踊り場に移動する。
だが、3階は男子禁制を律儀に守り誰もそれ以上は踏み込もうとせずその場で思い思いの意見を言い合っていた。

それから暫らくしてからティナの大丈夫だよ!と言う声が聞こえてきた。
悪いとは思いつつ少しだけ乗り出して上を見上げると階段を下りかけているティナの姿が見えた。
しかも何かを引き摺っている様な動きだ。

『な、何してるッスか?』

態勢はそのまま、声を掛けてみると、手摺りから少し乗り出して下を覗き込むティナと目が合った。
ティーダ以外にも心配そうな顔をしているフリオニールやクラウド、他の面々も揃っていた。

『あ、皆揃って丁度良かった!ちょっと手伝ってくれる?』

何やら嬉しそうに笑うティナ。
一体何を?と思いつつ後ろを振り向きルーネスの姿を確認すると、行って来るッスよとぐっとルーネスを押した。

『ちょっと待ってよ!』

何で僕が?と抗議の声を上げるが、ティナの頼みを断るッスか?と言うティーダの声と、たまちゃんお願いというティナの声に折れざるを得ない。
ティナの頼みだから聞いてあげるんだからねと残し、失礼します…と呟きながら恐る恐る階段を上がる。
半分ほど上がった所で上を見上げると階段の上の手摺りにしがみ付いて座り込んでいるセシルとそのセシルの腕を掴み引っ張っているティナの姿が確認出来た。
この奇妙な状況に、何してるの?と思わず問い掛けた。

『折角だから皆にも見てもらいたくて』

『いくらティナの頼みでもこれは嫌だ…』

と顔を真っ赤にして涙声なセシル。

『ね。セシル下ろすの手伝ってくれる?』

『あー、う…ん』

セシルには悪いとは思いつつ、ティナの頼みだし…

『ごめんよ、ティナの頼みは断れないから!』

かなり強引だが2人掛かりで2階へとセシルを引き摺り下ろすのに成功した。
そしてセシルの姿を見た2階で状況を見守っていた一同は一気にどよめいた。
若干一名見事に鼻血出してその場に倒れたのはお約束。
セシルが着ているのは胸元を大胆に露出させお尻を辛うじて隠している程度丈の黒いワンピース。短めながらもフリルと長いリボンが可愛らしいエプロン。ガーター付きの白いオーバーニーソックス。頭にはフリルカチューシャ。いわゆるミニタイプのメイド服だ。
何故こんな物がパンデモニウムにあったのかは多分探ってはいけない事であろう……

『ああ、もう、見ないで!!』

真っ赤な顔をしてスカートを両手で押さえながらもちょっぴり内股気味になっている。
スカートが本当にギリギリの丈なので余り前を引っ張ると後ろが見えてしまう事にきっと気が付いてはいないであろう。

『うわ……セシルって本当に男ッスか?』

違和感なさ過ぎッスよ!と嬉しそうなティーダ。

『ティナ、よくやった!』

ぐっと親指を立ててはにかむ様に笑顔を見せる。 ジタンもやっぱり年頃の男の子です。

『(悪い、セシル…普通に似合ってるんだが…)』

内心では悪いと思いながらもつい目が行ってしまうのはクラウド。

『成人男性が似合って良いの?』

多分唯一のまともな反応を返したのはルーネス。

『似合うでしょ?♪』

両手を組んで満足気なティナ。
そして、ウォルとスコールは真顔…たが… 何やら内心良からぬ事を企んでいるらしい。

『なあ、セシル。これからおれの部屋に来ないか?』

セシルの手と腰を掴みぐっと迫ったのはバッツだ。

『え、ちょっと?!』

『バッツ!!』

だがすぐさま178910がバッツをセシルから引き離して全力でフルボッコにされたのは言うまでもなく。
抜け駆けは許さんといった声も聞こえた気がしたが…気のせいか。

『全く。油断も隙もないな、この20歳児は』

続けて任務終了だと言いながらライオンハートをしまうスコール。
ティーダもワールドチャンピオンをしまいながら床に倒れ付しているフリオニールの脇にしゃがみこむ。

『フリオニールには刺激が強すぎたッスかね?勿体無い』

大丈夫かー?と声を掛けてみるがやはり反応がない。
顔を上げるとウォルとスコールとジタンが何やら真剣に話し合っているのが見えた。
何話してるッスか?と声を掛けてみたら、ジタンが焦り顔でこう言ってきた。

『今のセシルをゴルベーザに見られたら色々とヤバそうだからどう攻防するかって話だよ』

バッツなんか構ってる場合じゃなかったとさらっと聞こえた気がしたが多分これも気のせいだろう。

『うおおおおー、それは確かに色々とまずいッス!!俺も手伝うッスよ!!』

好き勝手に騒いでいる面々を見ながら、そろそろ着替えても良い?と小声で言ったセシルに対して、ダメ!、却下!!と言った言葉がすぐさま返ってきた。
がっくりと項垂れ、僕は理不尽な命令(?)に逆らえない臆病者だ…と階段の手摺にしがみ付いていた。

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結局その後、セシルの様子を察したゴルベーザが光臨しEXバーストがセシルとティナ以外に炸裂した事は言うまでもなく。

『セシル、こっちへ来なさい』

『え、ちょっと、兄さん?!』

『いいから来なさい』

有無を言わさずセシルを連れてその場から消えるゴルベーザ。
その後暫く月兄弟の姿を見た者は居なかったそうだ。

勿論、美味しい所は兄さんが掻っ攫います(笑)

ティナがノリノリだとセシルも抵抗できないんじゃないかなと思います(笑)ティナ最強>ヮ<
イラストと小説で1セットですので、宜しければそちらも見てやってくださいませ。