4話
『ウサギ?』
『ああ、少し前に野獣に襲われてる所を助けて保護したんだ』
来客があった。
腕のいいハンターでこの森で狩をして生計を立てているらしい。
確か、名前をフリオニールと言ったか。
時々バッツの所へやってくるのは何か取引をしているからみたいだが。
『いや、俺は狩る側だからそんなに詳しくないし……その辺はバッツの方が詳しいと思うんだが』
『ちょっと待ってて、連れてくるから』
『あ、ああ』
少し離れた所で2人のやり取りを聞いていたスコールは、セシルが元気がないのはバッツの所為だろうがと内心思っていた。
暫くして隣の部屋からセシルを抱いてバッツが出てきた。
案の定セシルの顔は青ざめておりカタカタと身体を小刻みに震わせていた。
そんな状態で初対面のフリオニールに会わせた所で逃げ出すんじゃないかと思ったのだが。
『顔色、悪いな』
『かなり人見知りが激しくてね。おれにもまだ懐いてないからさ』
『そうなのか』
よく言う。確かにセシルの人見知りは相当酷いが、セシルが震えているのはアンタを怖がっているからだろうが。
空いている椅子にセシルを座らせると頭を撫でてからバッツも椅子に座る。セシルはぎゅっと目を瞑って下を向いたままだが。
フリオニールはセシルの近くまで行くと目線を合わせるように屈む。
『初めまして。俺はフリオニールって言うんだ』
恐る恐る顔を上げてフリオニールを見たセシルは小声で、セシルって言いますと返した。それだけでまた下を向いて黙ってしまったのだが、逃げ出さなかったのには少し驚いた。
『触って大丈夫?』
『あー、うん、一応本人(?)に確認取れば大丈夫だと思うけど』
『ごめん、ちょっとだけ耳触るな』
断ってから垂れている耳をそっと持ち上げて内側を確認していく。
次に名前を呼んで顔を上げるまでじっと待つ。
『目、見せてくれる?俺を見なくて良いから、目開けて欲しいんだ』
まだ少し身体は震えているが顔を上げてフリオニールの瞳を見た。
怯えた色を含むが綺麗な紫水晶の瞳をしていて、一瞬フリオニールは引き込まれたかのように動きを止めた。
『……綺麗な紫色だな。少し濁ってるみたいだけど』
元気になった時にまた見せて欲しいな、凄く綺麗だと言いながら頭をそっと無意識に撫でていた事に気が付きごめんと慌てて手を引っ込めた。
セシルも撫でられていたのが気持ち良かったらしく目を細めていたのだが慌てたフリオニールに吃驚して身体を強張らせた。
『…えっと……なんとも言えないけど……ストレスかな。まだ保護してそんなに経ってないんだよな?』
『ああ』
『多分、環境の変化に戸惑ってるんだと思う。慣れるまでそっとしておくのが1番じゃないかな』
これだけ臆病な性格だと馴染むまでかなり時間かかるだろうから気長に見てあげて欲しいと言って椅子に座る。
『狩人止めて獣医の資格でも取ったらどうだ?』
『いや、流石に獣医は厳しいって。金も掛かるし』
これがセシルとフリオニールの出会いだった。
セシウサギ、フリオとご対面です。
やっぱりフリオニールは一目惚れです(笑)
最初バッツにセシルは♂だぞって言われているシーンがあったのですがカットしました。
ウサギの体調を確認するには目を見るのが1番良いそうです。
頭撫でられるの大好きです。
バッツでもスコールでも優しく撫でてくれるとじっとしてると思うけど…